私たちの命を支える食料をめぐっては、世界的な人口増加に伴う増産が求められる一方、食料生産による環境負荷の低減などが課題となっています。こうした中、生産から加工、流通、消費に至るまでの「食」に関する新技術やビジネスモデル構築が注目を集めています。
この分野では欧米の企業が先行していましたが、日本でも近年、フードテック産業を推進する動きが強まってきました。2020年には農林水産省の主導により、食品メーカーやベンチャー企業、研究機関、関係省庁が参加して「フードテック官民協議会」が設立され、課題解決や新市場開拓などをテーマに活動を開始しました。
江戸時代、大阪は「天下の台所」と呼ばれ全国から米や農水産物などの食材が集まり、ユニークな食文化が生まれたところです。大阪とともに京都は、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」の本場です。歴史的・文化的に「食」と深い関係を築いてきた関西には、農業系学部がある大学や農業関連の研究機関、食品メーカーが集積し、大学発ベンチャーを含め多くのフードテック企業が活動中です。
京都府は「京都フードテック基本構想」をまとめ、関連企業の集積や研究開発への支援、大学と企業のネットワーク構築を進めるなど関西の自治体もフードテック産業の推進に力を注いでいます。
このコーナーでは、先進的な技術を持つ企業をピックアップしました。実際にそれぞれの企業に足を運び、各社の高い技術を体験してください。
〒636-0245 奈良県磯城郡田原本町味間161-2
アグリテック・フードテック
株式会社アグリテックプラスは、人々が抱える農業課題に対し、具体的な解決手段を提供し、持続可能な農業の実現に向けて取り組んでいる会社です。
地球規模で抱える農業課題、食糧自給率・農業人口・耕作面積の減少)、農業収益性・グローバル展開の遅れ、農業の課題解決の手段となりえる植物工場の成功例がない等の課題を解決する手段として全天候型栽培技術(植物工場)を開発しており、太陽光型モデル(温室)と太陽光・人工光併用型モデル(インドア植物工場)の開発を進めています。
太陽光型では暗黒制御技術を駆使して一季成イチゴの周年生産を世界で初めて成功しており、太陽光・人工光併用型(インドア植物工場)ではイチゴの周年生産やワサビ・葉物野菜・薬用植物・ハーブ類と多種多様な品目の生産に成功しています。
インドア植物工場では農業の既製品や未活用物件を利用する事で従来の半分以下の設備投資で実現でき、従来の植物工場が抱える課題も解決します。
当社が開発した密植栽培技術により通常の垂直型植物工場よりも更に密度の高い栽培が可能となり、収穫量が格段に多くなるのも特色です。
〒619-0215 京都府木津川市梅美台8-1-2
アグリテック・フードテック
共栄製茶株式会社は、京都府を製造拠点に高品質な日本茶を中心とした製茶事業を展開しています。
1836年の創業以来、伝統的な製法と最新の技術を融合し、国内外で高い評価を受けています。日本屈指の茶師に厳選された茶葉を使用し、FSSC22000認証工場で徹底した品質管理体制のもと製造を行っており、業務用から高級茶まで多様なニーズに応えています。
HALAL や KOSHER の認証も取得しており、トップクラスの製造量を誇る抹茶は、日本国内だけでなく、北米、欧州、アジア、オセアニアなど30ヵ国以上へ輸出され、世界中へ日本の茶文化を広めています。また、OEM事業にも注力し、顧客ブランド向けの受託生産を行うことで、パートナー企業の事業発展に貢献しています。
環境保全を中心とした持続可能な事業体制確立をめざすとともに、抹茶の健康効果の研究にも積極的に取り組んでいます。共栄製茶株式会社は、「信頼される品質」を追求し、地域社会と業界の発展に貢献し続けます。
見学先の「京都テクノセンター」(製造・開発拠点)に加え、京都府宇治市の「TEA SQUARE MORIHAN」(日本茶文化施設)の見学も可能です。
〒556-0022 大阪府大阪市浪速区桜川1-1-30
アグリテック・フードテック
スパイスキューブ株式会社は植物工場(水と電気で野菜をつくる農業施設)に特化したアグリテック系のスタートアップです。
農業人口減少による食料自給率問題など、農地を不要とする室内農業で解決できる領域は多く、スパイスキューブ株式会社では、オフィスや住環境から排出されるCO₂を室内で野菜に吸収させるシステム開発を進めています。LED照明と養液循環する栽培技術であれば、室内で農産物を作ることもCO₂削減に寄与できるとも考えています。当社のビジネスモデルの特徴は小規模植物工場やDAC装置の建設後にあり、植物工場産野菜の出口戦略まで現地支援できることです。農業ビジネスの本質は生産者の希望価格で農産物を流通させることが最重要であり、当社ではそれを実現することができると考えています。
〒680-0871 鳥取市吉成南町2-8-15
アグリテック・フードテック
株式会社タシマボーリングは昭和61年の創業以来、さく井工事を専門とし、全国展開でボーリング工事に取り組んでいる会社です。
令和3年4月からは新規事業として「地下海水をつかったマサバの陸上養殖事業」を展開しています。海洋環境の変化により減少する漁獲量が問題視される中で、私達は安定的に飼育可能な陸上養殖に着目しました。井戸掘り技術を活かしたこれからの水産業に取り組むうえで、太陽光などの自然エネルギー活用や新たな発想、スタイルを取り入れ、永続的に続く水産業を目指すためのビジネスモデルを築き上げながら事業展開を行なっております。
〒528-0057 滋賀県甲賀市水口町北脇1750-1
アグリテック・フードテック
ツジコー株式会社は、1963年に滋賀県甲賀市に創立し、照明器具の設計生産事業を行っている会社です。
現在では、自動化の設計組立を行うメカトロ事業、車部品の順立てを行うアウトソーシング事業、ナチュラル食品原料事業及び小ロットでの野菜・果物などの受託加工を行っています。ナチュラル食品原料生産に関しては、タイのペッチャブーンに加工工場を立ち上げています。タイでは、主にバタフライピーの花弁から食品着色用として、青いナチュラルパウダーを生産しています。当社の加工技術は、植物の栄養価を失わずに殺菌粉末化できることに特長があります。
見学先の野洲事業所では、食品着色向けのナチュラル食品生産事業を紹介します。