気候変動問題に対応するため、温室効果ガスの削減は世界規模での課題となっています。脱炭素を進めるためには多額の投資が必要ですが、産業界では、カーボンニュートラルへの対応が新たなビジネスチャンスにつながるとの期待感も強まっています。脱炭素に関連する新技術・新ビジネスは、世界の、そして日本でも最も熱いテーマです。
日本は2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ達成を宣言しました。政府は脱炭素化を推進するため「グリーン成長戦略」を策定し、カーボンニュートラルに関する技術開発への支援や脱炭素事業に取り組む企業を強力にサポートしています。2兆円の基金創設や税制優遇措置の導入、規制改革などを通じて、この分野への投資を促進するための政策を総動員する方針です。
ここ関西でも、次世代型の蓄電池や太陽光発電、水素利用、二酸化炭素の回収、電気自動車・燃料電池車などのゼロエミッションモビリティといったさまざまな分野で研究開発や実用化に向けた取り組みが進んでいます。カーボンニュートラルへの対応をコストアップ要因とネガティブに受け止めるのではなく、新たなビジネスチャンスと捉えて、国の機関や自治体が企業をサポートしています。2025年の大阪・関西万博でも、カーボンニュートラルが重要なテーマのひとつに位置付けられるなど関西の産業界もこの分野に積極的に取り組んでいます。
このコーナーでは、カーボンニュートラルに関連する事業を手掛ける魅力的な企業を紹介しています。これらの企業にも足を運び、各社の高い技術力を確かめてみてください。
〒537-0024 大阪府大阪市東成区東小橋1-12-20
カーボンニュートラル
甲子化学工業はプラスチックを中心とする製品の設計・製造・販売を行う会社です。当社はこれまで廃棄されてきたホタテの貝殻をヘルメット=ホタメットとしてアップサイクル。ホタテの貝殻から作られたバイオプラスチックを原材料にすることで、CO2排出量を約36%削減することができます。ホタテの構造を模倣した特殊なリブ構造をデザインに取り入れ、通常より約33%高い強度を実現。破損したホタメットは、次のヘルメットや建材へと循環再生できます。
ホタメットの製造を通じて、水産系廃棄物として年間約4万トン発生していた貝殻を有効利用し、廃棄物削減に貢献。それがひいては、ホタテ貝の国内有数の生産地である、北海道や青森の海辺の景観等を保つのにも役立っています。
〒770-8001 徳島市津田海岸町3-77
カーボンニュートラル
株式会社ダイリFPCは木材を中心に取り扱い、山林管理から建築材の販売、壁組工法を中心にコンポーネント化への工場生産まで営んでいる会社です。
最近では、川上から川下まで一貫した循環型製造の思想に基づき、AOLAという子会社で、徳島の地域資源である「藍」を作付けから精製まで行っています。染料である藍を、塗れる・吹付けができるという今までにない加工工程にも使える原料として精製し、藍染建材・藍染生活雑貨というオンリーワン製品を生み出しています。
またダイリFPCの木材業では、バイオマス発電所の誘致により、将来的に国産材の完全な循環型利用をめざして、未利用材や木皮などの廃材ゼロの完全な循環型の資源利用をグループ全体で実現することを目指しています。
〒526-0829 滋賀県長浜市田村町1281-8 長浜バイオインキュベーションセンター15号室
カーボンニュートラル
株式会社ノベルジェンは、天然の微細藻類を利用した二酸化炭素吸収・固定、水浄化、およびCO2を利用したタンパク質生産に関する研究開発をメインの事業としている会社です。
ビジネスモデルとしては、開発した技術をパートナー企業にライセンスし、パートナー企業を通じて社会実装を行い、パートナー企業からライセンス料を獲得するものです。さらに、その実装先に対し藻類培養状況のメンテナンス、藻類の販売、藻類を使った課題解決などのコンサルティング事業も行っています。
本技術は微細藻類の持つ力を最大限利用しています。
微細藻類は光合成をして成長・増殖します。光合成の際に水中に溶解しているCO2を炭素源として吸収するため、微細藻類を増殖させることによりCO2吸収及び水浄化を同時に行うことができます。さらに、光合成で増殖した微細藻類を餌とする水産物を飼育することでタンパク質生産も行うことができます。
我々は、提携する企業が希望する水を用いてこれらの目的を達成することができるノウハウと能力を有しております。本技術を工場、発電所、水処理施設等に導入することで、カーボンニュートラルとウォーターニュートラルを同時に達成でき、地球温暖化、水問題、タンパク質問題といった地球規模の課題解決に貢献できると考えています。
〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1-1神戸大学理学部A棟228
カーボンニュートラル
光オンデマンドケミカル株式会社は、下水、家畜の糞尿、生ゴミなどから発生するバイオガスの主成分であるメタン、海水の電気分解で発生する塩素、空気に含まれる酸素を原料として、光で医薬品原薬や中間体をつくるスタートアップ企業です。
メタンは二酸化炭素の約25倍の地球温暖化係数を持つ温室効果ガスであり、大気への放出削減が強く求められています。当社は、安全・安価・簡単かつエコな独自特許製法で、バイオガスを原料とする高付加価値化学品の生産・販売事業を展開します。産官学金コンソーシアムによる「光ものづくり拠点」を形成し、SDGsへの貢献をめざしています。
見学についてはホワイト国・機密保持契約締結といった条件があります。
〒612-8374 京都市伏見区治部町105番地京都市成長産業創造センター102号
カーボンニュートラル
株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチは、カーボンゼロ(脱炭素)社会の実現に向けた最先端技術の開発と実用化に取り組む企業です。
ルネッサンス・エナジー・リサーチは、創業者の岡田治が前職の大阪ガス時代に培った触媒関連技術を、幅広い領域で事業展開する目的で設立されました。大阪ガスより関連特許の製造・販売・ライセンスの権利を受け、水素製造用各種触媒の国内外の化学会社、石油会社への販売の他、神戸大学と連携し独自開発したCO₂選択透過膜のCO₂分離・回収分野への応用も進めています。当社が開発したCO₂膜分離法により、現状、大きな課題が残る水素ステーションの高効率化やコンパクト化、コストダウンが可能となります。今後はその特長を生かして発電排ガス、バイオガス、DAC(直接空気回収)等様々な分野への応用展開を進めていきます。更に、当社は優れた低温活性を有するCO₂のメタネーション触媒の開発にも成功しており、CO₂膜分離で回収したCO₂の再資源化技術開発を進め、脱炭素社会の実現に貢献します。