21 紀伊山地西部
蘭島と三田・清水地域 ©有田町
地域の特徴
本エリアの特徴は、紀伊山地の急峻な地形と高野周辺に成立する壮麗な林、それらを水源に流下する有田川の中・上流域の地形と自然です。
高野山周辺は、高齢級のスギを中心とした奥之院大杉林や、高野六木が混在する風景林を見ることができます。それらの豊かな森林は、宗教都市高野山の豊かな自然や、建造物の建設を支えた木々の歴史を感じます。
有田川上流域のあらぎ島の棚田は全国的にも価値が高く、水田には貴重な動植物が生育生息しています。
この地域独自の持続的農林業システムは高野山を支え、自然と地域の暮らしを融合・発展させてきました。
弘法大師伝説の残る生石高原は貴重な高原の山地地形で、ススキ草原は関西有数の規模を誇り、古くはカヤ取り場として人々の生活に密接に関わっていました。草原の中には貴重な植物もみられ、この生石高原の貴重な生態系を保全するために自然環境の育成保全活動が活発に展開されています。
本モデルコースでは、信仰・文化と自然の結びつきによる持続可能な地域資源保全の取り組みの姿を見ることができます。
地域
クローズアップ
高野山風景林

ユネスコ世界文化遺産 「紀伊山地の霊場と参詣道」
/和歌山県伊都郡高野町
高野龍神国定公園内にあり、高野山特有の豊かな自然環境を満喫することができます。近くには「高野六木(スギ・ヒノキ・アカマツ・モミ・コウヤマキ・ツガ)」が混在する、樹齢130 ~ 290 年の天然林が保存されています。「高野六木」は寺院建築に適した用材として、植林や天然下種更新で育成されました。江戸時代中期には特にヒノキ・コウヤマキが保護され、文化10 年(1813 年)に「高野六木」の寺院修繕用途以外での伐採が禁じられた事から、荘厳な景観が形成されました。
平成16 年には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界文化遺産に登録された、日本を代表する国際観光地です。当地は標高約800mに所在するため、温暖な地域が多い和歌山県にありながら、年間を通して気温が低い傾向にあります。
奥之院の大杉林

©総本山金剛峯寺
夜の金剛峯寺境内も楽しめます!
/和歌山県伊都郡高野町
弘法大師の入定地である奥之院は高野山の信仰の中心であり、その奥之院参道に大杉林があります。約2 km面積17ha に及ぶ墓地には大杉が林立し、20 万基を超える墓石群と共に幽玄かつ荘厳な雰囲気をかもし出しています。この大杉林は江戸時代に全国各地の大名から苗木の寄進を受け、信仰林として現在に至っています。昭和33 年に和歌山県の天然記念物、昭和46 年には国の特別母樹林として指定を受け守られています。
高野山では、参拝に訪れた人に高野山の歴史や良さを解説するガイドである「金剛峯寺境内案内人」より、様々な話を聞くことができます。ガイドには昼と夜の部があり、夜の部では日中と違った幻想的な奥之院を観ることができそうです。
蘭島と三田・清水地域

©有田町
保田紙の紙すき体験や うちわ作り等の体験もしよう!
/和歌山県有田郡有田川町
明暦元年(1655 年)に開発された蘭島は全国的にも価値が高く、平成25 年に「蘭島及び三田・清水の農山村景観」として国の重要文化的景観に選定されました。山間地の水田では、ツチガエルやトノサマガエル、アカハライモリ、ホシクサ等の貴重な動植物が見られます。
本地域では、農業を中心に、林業、養蚕、紙漉き、炭焼きなど様々な副業が発達しました。中でも保田紙は高野山の宗教的商品需要に応じたものです。聖地高野山を支え、平地の少なさを乗り越える自然と地域の暮らしとの融合・発展が認められたこの持続的農林業システムは、令和3 年に日本農業遺産に指定されました。
また山椒の生産も、全国の生産量の6 割を占める和歌山県内でとりわけ盛んです。温暖な紀伊半島の中でも標高が高いために積雪があるといった特色が山椒の栽培に適し、傾斜地等を利用した栽培がおこなわれています。
生石高原

©特定非営利活動法人 生石山の大草原保存会
生石高原から大峰の山並みまで見渡しにいこう!
/和歌山県海草郡紀美野町
生石高原は、標高870mの生石ヶ峰を中心とした面積約8.9 ㎢の中起伏山地で、貴重な高原の山地地形として和歌山県レッドリスト(2022 年)に選定されています。
生石高原のススキ草原は関西有数の規模を誇り、古くはカヤ取り場として人々の生活に密接に関わっていました。
20ha 余りにも及ぶ草原にはマツムシソウなどの希少植物が何種類も生育し、局地的に存在する蛇紋岩質の土壌にのみ生育するキイシモツケなどの群落も見られます。植生の遷移を抑えてこの貴重な生態系を保全するため、地元紀美野町・有田川町とNPO 団体によって、山焼きや雑木の伐採、遊歩道周辺の整備などの自然環境保全活動が継続的に展開されています。
また、高原の中央には弘法大師が護摩修行をしたと伝えられる「笠石」や、大火を焚いて雨乞いをした「火上げ岩」などがあります。
保全に関わっている団体
本地域では、年間を通じて様々なイベントが行われています。下記連絡先を紹介します。見学とともにイベントにも参加しましょう。
高野山寺領森林組合

©高野山寺領森林組合
高野山にある金剛峯寺をはじめ、寺院が所有する山林の施業管理を行っています。全国でも珍しい形態の森林組合で昭和23 年に設立しました。森林整備の他にも、歴史や自然を伝える環境教育や森林セラピーなどにも力を入れています。
住所:〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山45-17
電話:0736-56-2828
金剛峯寺境内案内人

©一般社団法人 高野山宿坊協会
ガイドは総本山金剛峯寺が主催する試験に合格した「金剛峯寺境内案内人」がつとめます。
《ガイドの連絡先》
ガイドは有料です。
■一般社団法人 高野山宿坊協会(昼の部のみ)
住所:〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山600
電話:0736-56-2616
■Awesome Tours(オーサムツアー)
住所:〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山734
電話: 090-2106-1146
サイト:https://awesome-tours.jp/
あらぎ島景観保全保存会

©有田町
棚田を保有する農家で1996 年に結成しました。地元住民や来訪者に、稲作体験や町主催の棚田ウォークイベントへの協力を通じて、農業の厳しさや豊かな自然・景観のすばらしさなどを実感していただき、併せて地域農業への理解が得られるよう努めています。
住所:〒643-0521 和歌山県有田郡有田川町大字清水387-1
電話:0737-25-1111(清水行政局)
特定非営利活動法人 生石山の大草原保存会

©特定非営利活動法人 生石山の大草原保存会
2001年発足、2003年にNPO認証を受けました。生石高原自然公園の景観や雄大なススキ草原の保全と希少動植物の保護を図り、来訪者や地元住民に対して保健休養および自然の大切さを学ぶ場を提供する活動を行っています。また「レストハウス山の家おいし」を運営しています。
住所:〒640-1114 和歌山県海草郡紀美野町中田899-29
電話:0734-89-3586
その他の訪問先や施設等
体験交流工房わらし
紀州手漉き和紙「保田紙」の伝統を継承し、手漉き和紙の製造の他、便箋、葉書、封筒、うちわ等の保田紙関連の商品や、地元高齢者の方々がわらや布で作った草履などを販売しています。また、紙漉きやうちわ作り、わらぞうり作りなど気軽にできる各種体験メニューも用意されています。
住所:和歌山県有田郡有田川町清水1218-1
電話:0737-25-0621
紀州へら竿製作工房 匠工房
近代化産業遺産に指定されている南海電鉄紀伊清水駅をリノベーションし、伝統的工芸品である紀州へら竿の職員育成の場として令和3年にオープンしました。職人による製作作業の見学や、製作工程の一部である「火入れ」「穂先削り」や「竹小物作り」の製作体験が出来ます。
住所:和歌山県橋本市高野口町名倉288
電話:080-2420-8983
和歌山県立博物館
和歌山県ゆかりの文化財及び博物館資料を、積極的に収集・保管・調査・展示が行われています。きのくに-和歌山県の3万年の歴史を紹介する常設展「きのくにの歩み-人々の生活と文化-」と、県内の文化財や歴史を主題とした展示が行われています。
住所: 和歌山県和歌山市吹上1-4-14
電話:073-436-8670
サイト:https://hakubutu.wakayama.jp/
森と水の源流館
森と水の源流館では、「水」を育む豊かな森をはじめ、自然の持っている「美しさ、楽しさ、不思議さ」を多くの皆さんに知ってもらう施設です。 源流の森の四季折々の自然の営みを体感できる再現ジオラマや巨大パノラマ映像、川に棲む生き物たちに出会える大形水槽や、たっぷり遊んで学べる体験プログラムなどが楽しめます。
住所:奈良県吉野郡川上村宮の平(迫1374-1)
電話:0746-52-0888
サイト:https://genryuu.or.jp/main/
和歌山県立自然博物館
豊かで美しい和歌山県の自然を紹介する施設です。水にすむ生きものの展示を中心に、動植物、昆虫、貝、化石などの標本も展示・収蔵し、興味を持って楽しみながら学習できます。また、研究や教育普及活動を通じ、地域に親しまれる博物館をめざしています。
住所:和歌山県海南市船尾370-1
電話:073-483-1777
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