平井伸治委員「とっとり弥生の王国 ~蘇った「青谷(あおや)弥生人」~」(令和4年4月11日)

関西広域連合 平井伸治委員(鳥取県知事)からのメッセージ

とっとり弥生の王国 ~蘇った「青谷(あおや)弥生人」~

 

「その辺りにいる『おニイちゃん』のような顔で、間違いなく我々の祖先」
「青谷弥生人」復元像除幕式の挨拶で、思わず私が口にした言葉。やや面長で頬が張りホリが深く、クリクリした瞳に、黒々光る太めの髪。誰が見ても「最近お会いしましたね」と声を掛けたくなるようなイケメン風の男性。近年ゲノム解析や人類学・考古学などの学際的アプローチで日本人のルーツ「ヤポネシア人」の研究が進展してきた中で、篠田謙一国立科学博物館長や国立歴史民俗博物館の藤尾慎一郎先生、岡山大学の清家章先生など錚々たる研究者のご協力により、この青谷弥生人の復元が実現しました。

 

  「とっとり弥生の王国」と呼ばれる鳥取県には、青谷(かみ)寺地(じち)遺跡や妻木(むき)(ばん)()遺跡をはじめとして、弥生時代の遺跡が豊富に存在します。しかも出土品の保存状態が良く、特に青谷上寺地遺跡は1353点もの国重要文化財が発掘されており、研究者から「地下の弥生博物館」と賞賛されています。既に史跡公園となり親しまれている妻木晩田遺跡に加え、青谷上寺地遺跡も展示施設や史跡整備が進み、来年中のオープンを控えています。
  「青谷弥生人」が闊歩した現在の鳥取市青谷町は、弥生時代には東アジアと日本列島を結ぶ交易の拠点で、九州北部で生産された鉄器、北陸で産出する碧玉、中国で作られた青銅鏡や鉄器、朝鮮半島南部の土器など、日本海を囲む各地の品々が次々と出土しています。この地域では優れた職人も暮らしていたことが判明しており、碧玉をネックレス用に加工していたようですし、青谷上寺地遺跡で製作されていた花弁文様を浮き彫りにした木製の高杯は今も一見の価値がある美術工芸品です。

 

  約20年前、青谷の山陰自動車道建設に伴う発掘調査で、2世紀頃の溝跡から約5,300点もの人骨が発見されました。頭蓋骨や大腿骨といった骨の部位の検討から、少なくとも109個体分はあると推定され、3個体の頭蓋骨には脳の一部が残存している大発見でした。
  こうした超一級の弥生時代人骨資料などを手がかりに、国立科学博物館、国立歴史民俗博物館、鳥取県が共同で、人類学や考古学の観点から研究を進めてきた結果、これらの人骨が2世紀後半のもので魏志倭人伝に記されている「倭国乱 相攻伐暦年」(倭の国は乱れ、お互いに年々抗争を続けた)という歴史に通ずるかもしれないこと、DNA分析によって頭蓋骨32個体のミトコンドリアDNAに29もの系統があること、核DNAの分析に成功した12個体の遺伝的変異が現代日本人と同じグループに属することが明らかになりました。
ミトコンドリアDNAは母から子へと受け継がれますが、青谷上寺地遺跡出土人骨のミトコンドリアDNAには多数の系統が認められました。人類学の研究によれば、ミトコンドリアDNAの系統は、中世の鎌倉や近世の江戸のように外部から数多くの人が流入する大都市では多様性を有するとされていることから、青谷上寺地は多様な人々が行き交う弥生時代の港湾都市であった証左とも言え、私たちが弥生時代にイメージしてきた農耕による定住型ムラ社会という姿とは異なり、ダイナミックな交流拠点だったと思われます。
  「青谷弥生人」は、最も脳が残っていた「第8頭蓋」を元に、頭蓋骨の形状から再現した顔、DNA分析で明らかになった情報を組み合わせて完成しました。DNA分析の結果、母方は東アジア由来の渡来系、父方は日本列島に定住してきた縄文系の子孫でした。

 

  実は、鳥取県の担当部局は完成した復元像を淡々と展示するつもりでしたが、私は折角ここまで日本の最先端の研究者の英知を結集してでき上ったものであるので、世にお披露目をし、「日本人」が列島でどのように形成されてきたか広く人々に関心を持ってもらう契機としてはと提案し、職員には苦労をかけましたが、昨年10月31日に急遽除幕式を挙行することにしました。すると全国ニュースでも取り上げられ「あの人に似てる」という声が上がり続けるなど、弥生時代や鳥取県への関心を呼び起こす好機となりました。
  そこで、職員にお願いして間髪を入れず「青谷弥生人そっくりさん」大捜索作戦を始め、全国から自薦での応募を募ったところ、215名の方々が手を上げてくださいました。同時に募集した名前の応募者を加えると何と841(やよい)人。AIアプリで「そっくり度」の高い20名を選び出し、1月31日に、名前は「青谷上寺朗(あおや かみじろう)」と命名し、厳正な審査を経て決定した10名を発表しました。
  こうして選ばれた「ルーツが青谷弥生人かもしれない」皆さんには、風薫る5月に鳥取県にお集りいただき、いよいよ「そっくりさんグランプリ」が選ばれることになります。県内の弥生遺跡をお楽しみいただいたり、地元の自然や食べ物を満喫していただいたりして、1800年を越えた「里帰り」を楽しんでいただこうと計画しています。

 

  皆様も、「日本人のふるさと」を体験できる「とっとり弥生の王国」へ、青谷弥生人に会いにお越しください。
  青谷で、会おーや!

 

とっとり弥生の王国推進課ホームページ

https://www.pref.tottori.lg.jp/yayoi-suishin/

YouTube「青谷弥生人」のそっくりさん&名前審査結果発表会

https://www.youtube.com/watch?v=CPGBHHUkK7I

Twitter 青谷上寺朗@青谷弥生人(公式)

https://twitter.com/tottori_yayoi

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