門川大作委員「京都市が直面する2つの危機」(令和3年7月7日)

関西広域連合 門川大作委員(京都市長)からのメッセージ

「京都市が直面する2つの危機」

 

  京都市長の門川大作です。

 

  本市は今,2つの大きな困難に直面しています。ひとつはコロナ禍。そして,もうひとつは財政の危機。これらを乗り越えて,市民の皆様とともに,この魅力あふれる京都をより素晴らしいまちへと次の世代に繋いでいくため,覚悟を決めて改革に全力投球しています。

 

  まず,コロナ禍。
  感染症対策の最前線で医療や福祉,子育て支援等に献身されている全ての皆様に感謝申し上げます。
  府市協調によるPCR検査体制の構築(一昨年,京都府・市は市衛生環境研究所と府保健環境研究所を全国初の合築施設として一体化し,早速,威力を発揮)。国に先駆けて,独自基準による広範囲な濃厚接触者へのPCR検査の実施。京都ならではの地域に根差した900を超える医療機関によるワクチン接種。引き続き,京都府・市,関西広域連合,医師会,医療機関等が一丸となって,コロナから住民の皆様の命と健康を守り抜くことに緊張感を持って取り組んでいきます。

 

  次に,財政の危機。
  京都は都市特性として,市域の約4分の3が森林(その中に千年を超える歴史・文化を誇る集落が多く存在)であり,また,都市計画区域の7割が市街化調整区域であること,高さ規制をはじめとした景観保全を重視してきたこと,人口の1割(生産年齢人口では2割近い方)が学生であること(大学のまち,学生さんのまちは京都の大きな魅力)などにより,かねてから人口1人当たりの市税収入が少なく,ぜい弱な税収構造が続いてきました。
  一方,国の制度が不十分であった昭和の時代から,福祉,医療,教育,子育て支援など,国や他都市のサービス水準を上回る施策を創設し,実施してきました。こうした施策は,例えば,国基準による保育所等の待機児童8年連続ゼロの達成,全国トップレベルの民間保育士の給与(全国平均の1.34倍,全国:355.7万円,本市:476.1万円),手厚い職員配置基準(国基準の1.33倍)につながり,質の高い保育が保障できています。ただし,こうした高水準の取組のための財源について,この間,国の政策が創設,充実,改善された時にも見直すことなく,本市の一般財源で対応をしてきました。
  また,雨水整備率の全国平均60%を大きく上回る91%の達成,橋りょう(2,900橋)の耐震補強・老朽化修繕の計画的な推進など,暮らしを支える都市基盤整備や安心・安全の確保にしっかり取り組んできました。市民の足である地下鉄・市バスについては,大赤字の地下鉄再建に向けて,市長就任早々「経営健全化計画」を策定し,改革を断行。外部監査人から「絵空事」と厳しい見解も浴びた「1日5万人増客」の目標を2年前倒しで達成するなど大きく経営改善。市バスでも,6割に及ぶ赤字路線を廃止することなく,逆に路線・ダイヤを拡充。利便性の向上など攻めの経営で大幅に増客,収支改善。さらに,京都経済の持続的発展を市民所得の向上,担税力の強化につなげていくため,成長戦略,文化を基軸とした都市経営,都市格の向上にも取り組んできました。
  これにより,都市格は大きく向上し,国内外から高い評価を得てきました。

 

  例えば,日本経済新聞社の「SDGs先進度調査」(持続可能性の観点から,経済・社会・環境のバランスの取れた発展にどれだけ取り組んでいるかを評価)では,全国815市区のうち,第1回調査1位,第2回調査2位。森記念財団都市戦略研究所による「日本の都市特性評価」(国内主要109都市の特性を経済や文化など6分野で評価)では,3年連続総合1位。観光については,米国「Condé Nast Traveler」誌の読者投票Best Big Cities in the World世界1位。米国「Travel+Leisure」誌の人気観光都市ランキング世界1位。英国「Wanderlust」誌の読者投票Travel Awardsベストシティ部門1位など。
  そうした取組の成果は数字としても表れ,令和元年度以前の5年間で,個人市民税の納税義務者数は5%増,市税収入は9%増と過去最高を更新し続けました。

 

  しかしながら,今般のコロナの影響により,厳しい財政状況に拍車がかかり,再びマイナスからのスタートとなりました。昨年度,有識者等による「持続可能な行財政審議会」を開催。開かれた場で,9箇月にわたって活発な議論をしていただき,行財政改革に関する厳しい御指摘をとりまとめた答申をいただきました。
  現在,この答申を基に,令和7年度までの5年間を期間とした「行財政改革計画」の作成を進めており,7月11日まで,市民の皆様の御意見を募集しています。幅広い市民の方々のお声を活かして改革計画を策定いたします。
  計画期間のうち,特に令和5年度までの3年間を「集中改革期間」としており,未来のために覚悟を決めて「挑戦」と「改革」を断行していきます。

 

  先ず「隗より始めよ」として,本年4月から3年間で50億円の財源をねん出するための臨時措置として,全職員の給与カットを実施(新規採用職員等を除く)。それで確保した財源は自然災害等に備えて基金に積み立てます。理解を示していただいた職員の皆さんに感謝します。併せて,職員数については,平成20年以降,全体で3,500人削減してきましたが,今後の5年間で,必要な部署には120人増員しつつ,670人を削減いたします。(550人の削減)
  そして,あらゆる施策をゼロベースから点検。これは,単に財政が厳しいから見直し,縮小するということではありません。昭和の時代から今日に至るまで,立ち止まって原点に返る検討が実施できていなかったことを総括し,あらゆる政策・施策について,この間の社会状況等の変化,コロナ禍やこれからの時代をしっかりと見据え,受益と負担のあり方など検討しつつ,将来にわたって持続可能なものへと再構築するものであります。
  更に,京都の強みである魅力・ポテンシャルを最大限に活かし,文化と経済の融合,ウィズコロナ時代の社会的課題解決へのスタートアップ支援など,新たな成長戦略を進めていきます。
  例えば,市長就任以来の最大のテーマの1つである景観政策は大きく前進し,国内外から高い評価を得ていますが,本市の新景観政策は「保全・再生・創造」という明確な3つの理念に基づいているにも関わらず,全市的に「保全」重視の印象を与えています。そこで3年前,平成19年から実施してきた「新景観政策」が10年を迎えたことから,「新景観政策の更なる進化」や「持続可能な都市」に向けた審議会等を設置し,答申,御意見をいただきました。これらを踏まえて,景観政策と持続可能な活力あるまちづくりの両立に向けて,都市計画の見直し等を進めています。

 

  更なる改革と,京都の強みである魅力・ポテンシャルを最大限に活かした成長戦略を進めることで,持続可能な行財政を確立し,「全ての世代の皆様が暮らしやすい魅力と活力あるまち」を実現していきます。

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