井戸敏三委員「東日本大震災から10年」(令和3年2月16日)

関西広域連合 井戸敏三委員(兵庫県知事)からのメッセージ

(東日本大震災から10年)
  関西広域連合で「広域防災」と「スポーツ振興」を担当している兵庫県知事の井戸敏三です。
  人知を越え想像を絶する大災害となった東日本大震災から、来月11日で10年の節目を迎えます。まさにそのようなタイミングで、去る2月13日に福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生しました。被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。関西広域連合でも、すぐに対策準備室を立ち上げ、情報収集を行っています。
  今回の地震は、東日本大震災の余震ではないかと見られています。そして、東日本大震災は、設立後まもない関西広域連合にとって、その真価が問われることになった最初の出来事であり、大規模災害における広域支援のあり方に大きな一石を投じることになったと考えています。
  関西広域連合としての当時の対応を振り返りながら、迫り来る首都直下型地震や南海トラフ地震への備えについて、改めて考える契機にしていきたいと思います。

(被災3県への支援をスピード決定)
  地震直後、次々に伝えられる津波の映像から、尋常ではない災害であることはすぐに分かりました。集まるなら早い方がいい。当時、私が広域連合長を務めており、兵庫県が広域防災の担当であったことから、地震発生から2日後の3月13日には、構成府県の知事に呼びかけて、緊急の「広域連合委員会」を神戸で開催しました。
  関西が一つにまとまって、どのような支援ができるか、各知事の皆さんとアイデアを出し合いました。その場で「被災地支援」、「物資支援」、「人材支援」、「被災者の受入」という4つの支援方針を決定。被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県への支援を直ちに実行に移すことが確認されました。

(継続性と責任をもった支援体制~「カウンターパート方式」の導入)
  一方、被害が広範囲にわたり、かなりの長期戦が予測されるなか、いかに偏りなく、継続性と責任をもった支援体制を構築するかが課題でした。そのために私たちが取り入れたのが、構成府県間で支援先の役割分担を決める「カウンターパート方式」です。いまでこそ、国の災害対応でも採用されるなど全国的に定着した手法ですが、大規模災害でこれを組織的に実践したのは関西広域連合が初めてです。
  着想のヒントは海の向こうにありました。平成20年に発生した中国・四川大地震での復旧支援体制です。経済発展の著しい広東省が中心となって、震央となった四川省ブン川県(ぶんせんけん)の復旧を担っており、私も実際に復旧現場を視察しましたが、経済力のある広東省による復旧作業には凄まじいものがあったのを記憶しています。
  支援を積み重ね、次々とバトンタッチしていきながら、復旧を継続していく、そのための責任を負える仕組みが重要ではないか。そのことを各知事の皆さんにもご理解いただき、岩手県を大阪府、和歌山県が、宮城県を兵庫県、鳥取県、徳島県が、福島県を滋賀県、京都府が支援することが決まりました。

(情報は自ら取りに行くもの~「現地連絡所」の設置)
  被害の甚大なところほど情報は入らない。情報は待つのではなく取りに行くもの。阪神・淡路大震災の教訓の一つです。そこで被災3県に対して、カウンターパートとなった府県が「現地連絡所」を設置し、被災地のニーズに応じた支援を行うことを決め、その日のうちに先遣隊の派遣を行いました。私自身、3月18日から20日にかけて「0泊3日」の強行軍で、被災現場や避難所を巡りました。
  現地連絡所(のちに「現地支援本部」に改組)から得られる情報をもとに、不足する支援物資についてのきめ細やかなマッチングを行い、スムーズな支援につながりました。また、兵庫県が支援した宮城県では、被害の大きかった気仙沼市、石巻市、南三陸町の現地連絡所を拠点に、派遣された県職員や市町職員がチームを編成し、避難所運営や健康相談、がれき処理、まちづくりなど総合的な支援に取り組みました。
  現地連絡所を速やかに設置し、自ら情報を取りに行ったことは、カウンターパート方式の導入ともあいまって、スピード感をもった支援につながったと考えています。

(広域支援のノウハウを重ねる)
  関西広域連合では、東日本大震災での経験や教訓を活かしながら、その後も平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風など、大規模災害における広域支援に力を発揮してきました。
  もとより、関西広域連合を設立した狙いの一つは、南海トラフ地震など大規模かつ広域的な災害に対して、関西の司令塔をつくるべきではないかということでした。その意味で、関西広域連合が広域支援のノウハウを積み重ね、着実に深化を遂げてきたことは、この10年の成果であると言ってよいと思います。

(大災害時代に備える)
  東日本大震災以後、地震や豪雨災害は頻発、激甚化しており、「大災害時代」ともいえる状況に突入しています。首都直下型地震や南海トラフ地震など、国難ともいえる大災害が発生した場合、いかに迅速で効率的な広域支援を展開できるかが鍵となります。
  関西広域連合では、既に「関西防災・減災プラン」と、これに基づく「関西広域応援・受援実施要綱」を策定し、統一的な対応ができる体制をつくっています。特に、発災からのタイムラインにより、各主体の課題対応をマトリックスで整理し、災害対応をシナリオ化しています。また、「首都直下地震における応急対応期の被災自治体支援のあり方検討報告書」や「南海トラフ地震応急対応マニュアル」も策定しています。これらが絵に描いた餅にならず、しっかりした活動を展開できるよう、具体的かつ実践的に準備しておく必要があるかもしれません。
  災害への備えに終わりはありません。関西全体の防災力のさらなる向上をめざし、引き続き全力で取り組んでまいります。皆さまのご理解とご協力をお願いします。

  次回(3月末頃予定)は、新型コロナウイルス感染症について、関西広域連合での広域連携について触れたいと思います。

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