「関西広域連合文化振興指針」の策定

広域観光・文化・スポーツ振興のイラスト

関西広域連合文化振興指針「文化首都・関西」ビジョン

策定の趣旨

 関西には、日本を代表する世界遺産や1400年の歴史に裏打ちされた伝統芸能・祭礼から現代芸術に至るまで、内外の多くの人々を魅了する文化資源が数多く存在し、関西の主要な魅力は「文化」であると言っても過言ではない。従って、関西広域連合(以下「広域連合」という。)としては、関西の魅力を支える個別の文化資源やコンテンツの輝きを守り、さらに向上させ、内外に発信し、次世代に継承・発展させるなどの文化振興の施策が不可欠である。

 しかし、平成22年12月に発足した広域連合の「広域計画」や「関西観光・文化振興計画」では文化振興について十分な位置付けがなされておらず、地域の文化振興の中核を担う広域連合構成府県市の取組も踏まえ、広域連合が関西文化の振興で果たすべき機能と役割を早急に検討する必要がある。

 また、広域連合規約においても文化に関する記載はあるものの、文化振興について取り組める事務の範囲が示されていないことから、この際、「当面継続・充実を図る取組」と「将来的に検討する取組」という課題認識も持ちながら、現行施策の計画的裏付けを図るとともに、来年度以降の分野別計画の改定も見据え、その骨組みとなる中長期的な文化振興の目標や方向性等のコンセプトも含めた、今後、広域連合が関西全体の文化振興を進めるための包括的な指針を明らかにするものである。

基本理念

 関西の特徴である歴史と文化の集積を活かした広域的かつ効果的な施策の展開とともに、日本文化のルーツである関西の文化の振興と発信力を一層高め、関西をこれまで以上に、わが国の文化の中心とすべく「文化首都・関西」の実現を目指し、さらに、世界を視野に「アジアの文化観光首都」としての発展を目指す。

 このような理念のもと、本指針は広域連合が行う文化振興施策として、関西における豊かな文化創造を育む基盤づくりが最も必要であるとの観点に立って策定した。これにより関西文化の一層の向上を図り、わが国の文化をより豊かなものにすることを目指す。

施策の体系

 観光分野との連携をもとに、持続可能で豊かな文化を醸成するための基盤、すなわち「情報発信[基盤1]」「連携交流支援[基盤2]」「人づくり[基盤3]を進める。また、これら3つの基盤づくりを支える環境(プラットフォーム)づくりを通じて、広域連合として関西全体の文化振興を図る。

施策の体系イラスト
  •  基盤1「情報発信」 ~関西文化の振興と内外への魅力発信
  •  基盤2「連携交流支援」 ~連携交流による関西文化の一層の向上
  •  基盤3「人づくり」 ~関西文化の次世代継承と人材育成
  •  情報発信・連携交流支援・人づくりを支える環境(プラットフォーム)づくり

当面の施策方向

基盤1「情報発信」 ~関西文化の振興と内外への魅力発信

1.「関西文化」の認知度とイメージの向上

 関西が持つ豊かな文化資源とその持つポテンシャルの大きさを活かすため、「関西文化」のイメージを明確にし、そのイメージと魅力を「関西の文化力」として内外に十分に認識してもらうための情報発信を行う。

2.豊富な文化資源のプロデュースによる効果的な魅力発信

 関西各地の幅広い文化情報を集約し、「関西文化」の明確化と効果的な情報発信を行い、併せてそのためのプロデュース機能の整備と仕組みづくりを行う。

基盤2「連携交流支援」 ~連携交流による関西文化の一層の向上

1.各府県市の文化施策の総合的な効果の誘引

 平成13年の文化芸術振興基本法(平成13年法律第148号)の制定以降、各自治体では、文化振興条例の制定や基本計画の策定など、それぞれの特色を踏まえた施策の展開が進められている。こうした各構成府県市における固有の文化振興施策の内容や効果等を踏まえ、広域連合が果たすべき役割を整理し、関西全体の文化振興を図る。

2.EUの先進例から学ぶ

EU(欧州連合)のように、ある分野で域内をリードする加盟国の先端施策が域内全体に波及する施策モデルも参考に、関西全体の文化力の向上につなげていく。

3.観光・産業等他分野との連携

 文化は暮らしや経済に密接に関係している。関西は、伝統的な「ものづくり」や「匠の技」をはじめ、生活文化に至るまで、各地域において、世界に誇るべき優れた創造性あふれる文化を多数生み出してきた。

 こうした文化を広域的な視点でその魅力を内外に伝え合い、ブランド力の向上を図ることによって観光やクリエイティブ・インダストリーの振興など他分野との連携を進める。

情報発信・連携交流支援・人づくりを支える環境(プラットフォーム)づくり

 関西全体のブランド価値を高め、観光との連携による広域的な誘客効果を地域振興に確実に波及させるためには、関西文化の情報発信や連携交流のあり方について、広域的な視点から検討する仕組みづくりが必要である。

 関西文化を一体となって振興するため、これまで必ずしも十分ではなかった行政間の連携交流を図るための場づくりや、それに加えて、様々な分野の専門家等から幅広い知見を求め、意見交換するための仕組みづくりなど、相互の交流・対話・情報交換を通じて、関西文化の振興策を協働により検討・提案する環境(プラットフォーム)づくりを進める。

中長期的な方向

基盤3「人づくり」 ~関西文化の次世代継承と人材育成

 「人づくり」については、将来的な課題として、以下の2点がある。

  • 若者や子どもたちをターゲットにした「関西文化」の魅力発信と文化の継承
  • 関西の文化力を支える人材の育成

 関西文化の次世代継承と人材育成という「人づくり」の面についても、各構成府県市の取組も踏まえ、広域連合として何をなすべきか、規約改正も含め、中長期的に検討する。

施策の推進に向けて ~推進体制の構築

 広域連合が揺籃期にあり、財政的な裏付けのない下での推進体制は、可能な限り府県市や民間などの協力が必要であり、様々な関係づくりに工夫が求められる。本指針に基づく広域連合としての文化振興施策を推進するに当たっては、官民連携も視野に入れ、専門家や有識者も含めた恒常的な推進体制の構築が望まれる。

関西広域連合文化振興指針策定に係る意見聴取会議委員(五十音順)
氏名 役職等

天野 文雄

文化庁関西元気文化圏推進・連携支援室長(関西分室長)

河内 厚郎

神戸夙川学院大学教授・文化プロデューサー

坂上 英彦

京都嵯峨芸術大学教授(観光デザイン学科)

佐藤 卓己

京都大学大学院准教授(メディア文化論)

佐藤友美子

公益財団法人サントリー文化財団上席研究フェロー

森 恭彦

読売新聞大阪本社編集委員(文化担当)

 

会議の開催経過

第1回会議

平成25年6月14日 金曜日[京都府国際センター会議室]

第2回会議

平成25年7月9日 火曜日[ホテルグランヴィア京都7階「方丈の間」]

第3回会議

平成25年8月2日 金曜日[京都府国際センター会議室]

参考資料1 施策テーマ別の取組(例)

「充実・発展を図るべき既存の取組」

情報発信 ~関西文化の振興と内外への魅力発信

1.関西の文化をテーマでつなぐ魅力の発信
  • 「人形浄瑠璃」「祭り」など関西の文化をテーマでつなぎ、時代と地域を越えてその魅力を伝える取組の推進
  • 「古典の日」普及に向けて、関西の「古典」の魅力を発信する取組の推進
2.豊富な関西の文化情報の発信
  • リニューアルした「関西文化.com」等を通じて、関西の文化施設の催し等芸術文化情報を全国に発信。さらにモバイル端末に対応する機能を追加 
3.関西文化に親しむ機会の充実
  • 関西の美術館、博物館、資料館等の文化施設を入館無料で開放する「関西文化の日」を通じて、関西の文化に親しむ機会の充実を図る取組を推進
  • 神社仏閣でのコンサートや体験型イベントの情報提供など、住民が気軽に文化芸術に親しむきっかけとなる工夫ある取組の推進 

連携交流支援 ~連携交流による関西文化の一層の向上

1.関西元気文化圏事業との連携
  • 関西元気文化圏推進協議会が実施する「関西元気文化圏参加事業」「関西元気文化圏賞」や、「関西元気文化圏推進フォーラム」との連携 
2.観光分野との連携
  • 関西文化の魅力発信に関する取組と観光分野事業との連携
  • 関西各地の伝統行事・伝統芸能、重要文化財建造物、史跡等の復元・公開事業など、文化遺産等の活用による観光振興につながる取組の推進

「今後考えられる取組(例)」

情報発信 ~関西文化の振興と内外への魅力発信

1.関西の文化をテーマでつなぐ魅力の発信
  • 関西の豊かな歴史・文化資源に着目した周年記念事業をテーマ別に編成し、関西を「歴史」でつなぎ、発信する取組の検討 
2.未来志向で創造性あふれる関西文化の魅力の発信
  •  現代芸術をはじめ、サブカルチャーを含めた創造性あふれる文化の発信

連携交流支援 ~連携交流による関西文化の一層の向上

1. 関西元気文化圏事業との連携
  • 「欧州文化都市」をモデルに、指定された関西の都市が他地域と連携交流し、固有の文化を広域的に発信する「関西文化力都市」の取組の検討
2.文化交流の促進

 府県市の先進事例を参考に、住民の文化活動の参画を促す先行的取組の共有化

情報発信・連携交流支援・人づくりを支える環境(プラットフォーム)づくり

1.行政間の連携
  • 事例勉強会、研修会の開催など、行政間の連携交流や人材育成を図るための場づくり
2.有識者、文化関係者等との連携
  •  行政が、様々な分野の専門家等から幅広い知見を求め、意見交換するための場づくり

参考資料2 関西観光・文化振興計画(文化施策の抜粋)

戦略テーマ4 文化振興等との連携

4-1 関西の文化芸術活動等の交流・協働と関西文化の魅力発信

  • 文化芸術活動の交流・協働を通じて関西は、世界的な文化の創造と発信の拠点になり、 「関西文化の日」の取組みなど、KANSAIブランドを広め、インバウンドの集客や文化振興を図る。
  • 世界遺産や浄瑠璃などをテーマでつなぐ「文化の道」のアピールなど、メッセージ性のあるインバウンドを展開する。

4-2 関西の「祭り」等の活用

  • 長い歴史の中で育んできた伝統ある祭りを「祭りの道」として、また、ライトアップ等を「光の道」としてアピールするなど、新しい文化を創造するイベントを新しいコンセプトで連ね、文化が躍動する「KANSAI」を世界に発信する。

4-3 関西文化に親しむ機会の拡充

  • 古典の日を普及啓発し、古典ゆかりの地や各地のくらし・風習をたどる「日本深発見の道」としてアピールするなど、奥深く日本文化のふるさと関西の魅力を世界に発信する。

参考資料3-関西の文化力とは

関西広域連合文化振興指針策定に係る意見聴取会議

 以下は、「関西広域連合文化振興指針策定に係る意見聴取会議」の総意として、本指針の趣旨を一層深く理解してもらうためのものとして記すものである。

関西文化の役割

 今日の日本を取り巻く状況について見ると、政治・経済のみならず文化を含めたすべての情報が東京に一極集中した結果、相対的に地域の文化力が弱まり、東京発の文化との同質化が指摘されている。全国各地において、日本の長い歴史と豊かな文化的土壌の中で育まれてきた日本固有の伝統的な文化価値そのものが、存亡の危機にさらされている。

 加えて、東日本大震災では多くの人命が失われ、つづく福島原発事故では技術文明に対して国民が抱いてきた安全・安心イメージが大きく損なわれた。それは日本人の文明観をゆさぶった衝撃的なできごととして、多くの人々の脳裏に深く刻まれた。しかし、それは同時に、人と人、人と地域との絆の大切さ、人々が誇りとし、人間らしく生きるうえでよすがとしてきた地域の文化の重要性が見直される契機ともなった。

 このように、社会のシステムや人の精神が揺らぐ時代にあっては、今こそ、自分たちが築いてきた歴史とその中で培われた豊かな文化の蓄積に目をやり、確固たる価値を見直すことを通じて、未来に夢を託し、新しい歴史と文化を拓くことが強く求められている。

 我が国を代表する伝統文化、国宝、文化財など文化資源が集積し、また、我が国有数の「古典の宝庫」であり、日本人の誰もが「こころのふるさと」と憧憬するここ関西こそ、内外にこの国のあり様や将来像について明確なメッセージを発信し、次世代に語り伝えていく役割と責務があるものと考える。

関西の伝統文化の継承と文化活動の一層の促進

 関西は、古くから日本の都、また、商都として栄え、豊かな自然環境を有するほか、多くの国宝、重要文化財が至るところに所在し、古代から現代にいたる多くの有形・無形の文化遺産が集積している。

 また、王朝文学や能、狂言、歌舞伎、人形浄瑠璃、文楽などの伝統芸能が生まれ、茶道、華道などが今も生活に深く浸透している稀な地域でもある。これは、地域社会やそこでの人々の生活、地域の産業と経済が文化の厚い層の上に成り立ち、まさに文化的営みが今も続けられていることを意味する。

 さらに、祇園祭、天神祭、阿波踊りなどに代表される関西各地の伝統的な祭りや、宝塚歌劇団、吉本新喜劇などのライブエンターテインメント産業に代表されるように、関西はその長い歴史に培われ、地域に密着した伝統文化の蓄積とともに、その類い希なる創造性、すなわち常に輝きを失わず、多くの人を惹きつけ、活力を与え、時代に即した新しい文化を生み続けてきた。このように、関西は、その文化力をもって、国全体を見渡した新たな日本文化創生のモデルとしての可能性を秘めた地域といえる。

 一方、関西では、平成15年3月、河合隼雄文化庁長官(当時)が提唱した「関西元気文化圏構想」のもと、関西各地の魅力あふれる文化の力を結集し、豊かで活力のある圏域創りの推進を図るため、「関西文化の日」や「関西元気文化圏賞」など、関西から日本全体を元気にすることを目指した「文化力」を発信するための各種取組が幅広く展開されてきた。

 こうした取り組みの成果と精神は、文化庁関西分室の設置と併せ、関西の文化を一体的に捉え発信し、「関西文化の道」や「はなやか関西」といった関西全体の文化を盛り上げる運動に受け継がれるなど、府県域を超える広域的な文化振興モデルの将来像を内外に示す等の成果につながった。

 広域連合が進めようとしている、関西というエリアを対象にした文化施策は、東京への一極集中を是正し、文化のありようを多極化させ、地域の文化を掘り起こすことによって、関西における多様で魅力的な文化活動の一層の推進につながるもので、関西の文化や日本の文化を次世代に継承していく大きな役割が期待される。

関西の文化力を活かした観光振興とコンテンツの育成・発信

 関西では今もなお、文化の厚い基層の上に地域社会や産業・経済等が成り立っている。とりわけ観光振興は、文化資源そのものの魅力や知名度など、その発信力に負うところが大きい。地域で大切に守り伝えられてきた貴重な文化も、多くの人々を惹きつけるだけの魅力を引き出し、アピールしなければ、その記憶にとどめることさえ難しくなる。

 言い換えると、観光振興の視点から文化を捉えること、すなわち、文化を観光資源として活かすことは、経済的な側面ばかりでなく、地域を越えて保存・継承の気運を高めることになり、次世代への確実な継承を促すことにもつながる。観光と文化が車の両輪のように作用し合うことで相乗効果を発揮し、関西全体を活性化させ、文化の継承とともに地域社会全体に活力をもたらすものといえよう。

 一方、国内はもとより、世界で「文化」を産業活動の資源と捉えた民間の動きや政府の政策展開が活発化している。クールジャパンの動きに見られるように、我が国の伝統文化をはじめ、舞台芸術、音楽、小説、映画、アニメ、ゲーム等のコンテンツへの世界的な関心が高まっている現在、多くの文化資源が集積し、多彩な分野で先駆的なクリエイターを輩出するここ関西において、これを最大限活用し、文化産業の振興と国際化とを通じて、関西全体の活性化を図ることが重要であろう。関西の文化力に触れる機会を広げることにより、世界の人々に関西の魅力を発信し、関西への誘客気運を高めることは、観光や集客面での効果も極めて大きいと考えられる。

この記事に関するお問い合わせ先

関西広域連合広域観光・文化・スポーツ振興局

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