関西の食文化 - だし文化

だし文化

関西で作り上げられた「だし」の食文化

ごはん、みそ汁、焼き魚、漬物、小鉢がテーブルに並ぶ写真

バランスの良い食事形態である「一汁三菜」

  国際語にもなった「うま味(UMAMI)」という味覚の起源は、日本の食文化の根幹ともいえる「だし」にあります。
日本の文化には、大陸伝来の文化を独自に発展させたものが多い中、「うま味」を引き出す「昆布だし」「かつお節だし」などの「だし」は日本固有の食文化であり、それらの歴史をたどれば関西に深いルーツがあることがわかります。

日本には、古くから伝わる「一汁三菜」という食事形態が承継され、汁物や野菜が中心の食事であったことから、汁物などの料理にうま味を加える「だし」が欠かせないものとなり、固有のだし文化が発展したと言われています。
また、「だし」は食材のもつ本来の味わいを活かす調理法としても重要であり、日本料理の集大成ともいえる現在の京料理の育成や確立に、だしの文化は深く関わっているといえます。

5番目の味覚となった『だしの「うま味」』

だし昆布、かつお節の写真

だし昆布(写真上) かつお節(写真下)

 日本では古くから知られていた『だしの「うま味」』は、昆布だしに含まれる「グルタミン酸ナトリウム」が、「だし」の味の主体であるとの発見から、だしの「うま味」が、甘味・酸味・塩味・苦味に並ぶ5番目の味覚として追加されたという経緯があります。
 日本食の代表的なうま味成分は、昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸であり、それぞれに独特な風味を兼ねたうま味があります。また、グルタミン酸とイノシン酸が一緒になると相乗効果が起き、うま味が飛躍的に強くなることが経験的に知られていたことから、日本料理には、かつおと昆布を混合した「かつお昆布だし」が一般的に使われています。

 その他、だしのうま味にはカロリーがなく、減塩効果もあるとされていることから、最近の健康食ブームからも注目されています。

昆布の集積地であった関西~北前船のコンブロード~

北前船のコンブロードの地図写真

 昆布は、古くは朝廷が諸国から租税として納めさせた交易物や、天皇への供御などとされており、高級食材として利用されていましたが、その後、精進料理などにも使われるだしとして、日常生活にも浸透していったと言われています。
 昆布の主産地は、関西から遠く離れた北海道であり、当時、日本の中心地であった京・大阪までは、コンブロードと呼ばれたルートで運ばれていました。そのルートは、日本海の海づたいを「北前船」と呼ばれた交易船によって運ばれ、若狭湾の敦賀・小浜などに陸揚げされた後、陸路で運ばれていました。
 江戸時代になると大型化した北前船が登場し、下関を経由して直接大阪までの航路が開かれたことから、大阪・堺が昆布の集積地となり、昆布加工業が本格的に発展しました。最盛期の大正から昭和初期にかけては、150軒あまりの業者が集まる一大産地として、全国にその名を馳せるようになりました。

昆布加工が発展した背景~昆布職人の技術とその道具~

昆布を加工する職人が作業をしている写真

昆布を加工する職人(写真右上:とろろ昆布)

 大阪では、だしを取るための昆布以外にも、とろろ昆布、おぼろ昆布など、多くの昆布加工品が製造されています。昆布の加工には、熟練した昆布職人の技と鋭い感性が必要であり、昆布を削る包丁の微妙な力加減により、機械ではできない風味豊かな味に仕上がります。
 また、多様な細工昆布をつくり発展させてきた背景には、600年の伝統を持つ優れた堺の包丁があります。
 グレードの高い細工昆布を作るために昆布職人が優れた包丁を求め、刃物職人がそれに応えようとする、職人同士の切磋琢磨が大阪での細工昆布の質を高めていった理由のひとつです。

かつお節の発祥地は関西にある~和歌山県印南町~

かつお節ロードの地図写真

 かつお節は、カツオの保存性を高めるために作られたと言われています。ただ、当初のかつお節は現在のものとは異なり、堅くて味も香りも今ほど良くなく、保存性も高いものではありませんでした。
 これを解決に導いたのは、和歌山県印南の漁師であった角屋甚太郎。従来のカツオを煮て乾燥させるだけの製法に、まきを燃やして煙でいぶす行程を加えた「燻乾法」などを考案し、現在の香り高い風味があり、長期保存が可能なかつお節を生み出すことに成功しました。

2匹のカツオの写真

カツオ(かつお節の原料)

 甚太郎は、土佐(高知県)の足摺岬周辺で新たなカツオ漁場を発見し、同地を本拠として漁をしていた縁から、かつお節の製法は土佐にも伝えられました。また、同じく印南出身の森弥兵衛や與市が、その製法を西は枕崎(鹿児島県)、東は安房(千葉県)や伊豆(静岡県)にまで伝えたことが知られています。
 江戸時代の頃、かつお節は紀州や土佐で作られたものが上質であると知られていましたが、現在は、関西での生産量は少なく、日本のかつお節生産は焼津(静岡県)と枕崎(鹿児島県)が二大産地となりました。
 しかし、その発展の背景には関西で培われた技術があり、それを伝えた当時の人々の功績があります。

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