徳島県の山間部にある東みよし町には、日本原産の樹木が生い茂っています。この地では、森林保全の観点から一時期大量に杉が植樹されました。しかし、山を正常に機能させるために必要な、間伐作業などは積極的に行われていません。杉は、伐採後の活用が難しいからです。

株式会社ビッグウィル開発部部長・中西精一さんは嘆きます。「山の現状は酷いものです。植えたはいいものの管理はされず、山に杉が放置されているのです。生態系が密集すると山崩れの原因になります。人間の事情で自然を操作したのなら、その責任も人間が取らなければならないでしょう」。

ビッグウィルでは、間伐材や端材を有効活用する方法として木材シートを開発しました。0.23mmと紙のように薄いシートは、壁紙同様に扱うことはもちろん、業界では難しいとされている360度の折り曲げも可能。その柔軟性を活かして、天然木ならではの木目や香りを日常生活の中で身近に感じることができるようになったのです。

「やっぱり日本人ですから、杉には特別な感情があります。日本の地域資源とはこういうものだと示したいのです。成熟した社会、産業とは、自然へ敬意を払うものであるはずです」。