神戸市の株式会社ヤマナカ産業では、黒皮鉄のプロダクトブランド「aizara（アイザラ）」を展開しています。

金属加工を行う山中博貴さんも鉄製品に囲まれて育ちました。しかし鉄工所には背を向け、華やかなデザインの道に進みます。平成16年に家業を継いだときも乗り気ではなかったと言います。そんなとき、あることを思い出します。お父様が加工し、塗装業者へ運ばれていた鉄。美しく塗装され返ってきた鉄は、素材感が一気に失ったように感じていたそうです。“無骨な鉄の姿の方が魅力的ではないか…”。原点を思い出し生み出したのが、黒皮鉄プロダクトaizaraだったのです。

黒皮とは塗装前の鉄を覆っている酸化皮膜を指し、黒皮に覆われた鉄は、製品状態としては「完成前」と捉えられ、価値の高いものではありませんでした。しかし山中さんは、黒皮鉄の持つ個性的な光沢や存在感をそのまま提示しました。徹底して遊びを剥ぎ取ったソリッドな黒皮鉄プロダクトは、圧倒的な素材感を印象づけます。

「黒皮鉄の性質上、必然的に飾れないだけなんですよ。鉄製品と言ってもヨーロッパのロートアイアンとは違います。より近代的でクールなものを作っています」。
黒皮鉄プロダクトは、感度の高い建築事務所などから人気に火が付き、特注やコラボ製品も生まれています。